上場間もない企業のIRご担当者からよく聞く課題は、その企業の「認知度向上」の場合が多い。
果して、企業認知度とはどのように高めていくべきであろうか?
「当社はB to B企業だから・・・」、「規模が小さいのでなかなか・・・」など認知度が上がらない
理由は処々あるのだろうが、投資家はそれだけの理由でその企業を見切ってしまうものだろうか。
私の経験では、(個人・機関)投資家やアナリストは、通常の人よりも知的好奇心の強い人が
多いように思われる。特に熟練した投資家は、結果としての株価よりも、経済動向や業界の将来見通し、技術革新など様々な変化要素とそこから繰り広げられる「読み」を組立てることに快感を持つ人が多い。その「読み」の具体的な成果が、株価でのキャピタルゲインの享受であることをよく知っている。
投資家にとって認知度がないことは、決して買わない理由にはならず、むしろ他の人が見向きもしないが、その企業の良いところを知り行動に移すことはまさに知的好奇心をくすぐるポジティブな要因ではなかろうか。従って、企業は現在の認知度の高低に関わらず、投資家の知的好奇心に応えるような情報を発信していく必要があると考える。この繰り返しが信頼性を伴った認知度向上につながるはずである。
子供が「なぜ?」「どうして?」としつこく質問を繰り返すのは、何に対しても好奇心が強くそのことに興味があるからであるとよく言われている。投資家も真剣かつ興味がある場合には、様々な質問を繰り返し、納得して行動を起こす(この場合には、株式を購入するかどうかを決める)。
この投資家の知的好奇心に応えるのに絶好なコンテンツ形式が企業IRサイトにあるFAQ(よくあるご質問)である。
企業は、投資家やアナリストから様々な質問をぶつけられているはずである。すべてではないにしてもそれらの質問に、企業は何らかの対応をしているにも関わらず、投資家の知的好奇心そのものである質問と回答をほとんど開示していない。もちろん心ない質問をぶつけてくる投資家も中にはいると思うが、明らかに必然的な質問には企業はFAQという形式を通して随時開示していくことが、投資家の知的好奇心に応える情報の発信方法と言える。
当社では、上場後約3年以内の企業477社のFAQ(よくあるご質問)掲載状況を調査してみた。
その結果、コンテンツとしてFAQ(よくあるご質問)またはその類のメニューを表示している企業数は、270社(57%)であった。この社数自体も予想以上に少なかったのだが、さらに投資家の知的好奇心を満たす内容になっていた企業はわずかであった。多くの企業が上場時に一度更新したきりとしか思えない株式名義書換手続きやコード番号に答えるだけの非常にベーシックなFAQであり、その後寄せられたであろう質問への回答を掲載している企業は少ない。コンテンツの更新頻度を上げる効果も含め、IRご担当者はFAQを通じたアクティブな情報開示手法を取り入れてみてはいかがであろうか。興味を持ってサイトを訪れた投資家に対しては、開示姿勢とともに企業の印象を強める効果はかなり大きいであろう。定量的な評価だけでは不十分であろうが、参考までにFAQの数と社数のグラフを以下に掲載しておく。ちなみに今回調査したFAQを掲載している企業の中でFAQ数が最少の企業は3問、最多の企業は54問、平均数は15問であった。
上場約3年以内の企業のFAQ数別企業数分布
宮部 明郎
大手証券会社、トムソンコーポレーション、FISCO、IFISjapanを経て、2007年より当社に参画。
投資情報とIR情報は表裏一体の関係であり、投資家、発行体企業双方にメリットのある情報発信手法を目指し、奮闘中。主な著作に「相場への新たなるアプローチ」(共著)。