2008年04月13日

質問は思いやりとテクニック

先日、外国人機関投資家の講演を聴きに行った。彼は巧みな日本語でプレゼンテーションしてくれた。プレゼン終了後質疑応答に移った際、或る質問者の質問が非常に長かった。その上何を聞きたいのかが明確ではなかった。しかもあの長い質問の途中までは、明らかに質問に必要な前提ではなく、自分或いは自社のアピールだった。それ故と思うがその機関投資家は可哀想に的を外した回答にならざるを得なかった。

韓国の諺に「行く言葉が良ければ、帰る言葉も良い」というのがあるそうだが、質問者が回答者はいくら日本語が上手くても外国人であることを慮って、簡潔で論旨が明瞭な質問をしていたならもっと的確な回答が得られたに違いない。そう思える彼のプレゼンテーションだったから。

「質問」はアナリストやファンドマネージャー達は概ね巧みである。何を答えさせたいかが明確であることと、回答を引き出すための伏線をきちんと提示するからである。
一方、失礼ながら個人投資家の質問はそうとばかりとは言えない。質問をする目的が投資の判断材料の獲得ではなく、溜飲下げであるなら相応に納得できる質問はある(ただし、これを質問というかどうかは判らない)。

何れにしても、質問自体一つのミニプレゼンテーションと捉え、趣旨と理由をきちんと整理・構築して臨むことが人生における貴重な持ち時間の浪費防止にも貢献すると思う。

尤も今述べたのはあくまで講演などにおける質問であり、日常的に皆さんが直面する様々な問題や課題における質問や疑問の姿勢とは当然異なる。こちらの方はむしろその前提そのものから疑って掛かることが重要になる。


加藤正明 (アレックス・ネット株式会社 代表取締役)

2008年04月03日

「税理士卵ブログVer.3」

 ご無沙汰しております。ブログ作成が遅くなってしまいました。前回までの文言が硬かったので、今回からはソフトなタッチで書いていこうと思います。
 さて、今回のネタは為替について。最近は米国の景気の先行きに懸念があるとのことで、対米ドル為替レートの変動が激しく、円高基調にあるようです。ここで為替レートの決定要因として、いくつかの決定理論がありますが、今回は長期の実体経済を反映する購買力平価説について記載しようと思います。

長期:購買力平価説
中期:フロー・アプローチ
短期:アセット・アプローチ

 購買力平価説の一般的な考え方は、“各国の通貨価値は、各国通貨の購買力の相対比で決定される”というものです。例えば、ビックマック。ドルと円で考えた場合、まったく同一のビックマックを1個買うのにドルだと1ドル、円だと100円が必要であるとすれば、1ドルと100円の通貨価値、すなわち購買力は等しいということができます。つまり1ドル=100円が成立し、このように為替レートは内外の価格比率で決まると考えられているものです。しかしながら、厳密にこの購買力平価説が成り立つには、全ての財・サービスが貿易取引され、一物一価の報告が国際的に成立する必要があるとともに、輸送コスト・比貿易財の存在なども考える必要があります。
 なお、購買力平価説によると、国内外の価格をP(国内)、Pf(外国)、為替レートをEpとすると、“P=Ep×Pf”という式が成り立ちます。

 ちなみに、最近の為替相場(円)と日本株式の関係を簡単に算出してみました(対象期間は2007年11月1日~2008年4月1日まで)。
対米ドルでの円安と日経平均上昇との相関:0.227756
対ユーロでの円安と日経平均上昇との相関:0.235315
対米ドル・対ユーロとの相関:0.795257
対米ドル変化率(11/1-4/1):-0.11109(11.1%の円高)
対ユーロ変化率(11/1-4/1):-0.03759(3.7%の円高)
日経平均変化率(11/1-4/1):-0.24979(24.9%の下落)

 いかがでしょう?先ほどは長期の為替レートの考え方を記載しましたので、これをそのままあてはめると、「アレ?これほど日本での輸入物の価格は変わったかな?」と思うかもしれません。しかし、長期的に物事を考えた場合、このような購買力平価説に基づいた為替レートに収縮していくものと考えられます(これには各国の物価水準にも注目!)。ちなみに、これから日本の通期決算発表のシーズンをむかえます。上記相関例からも傾向が分かるように、日本の株式市場はどうしても米ドルの影響が大きいのが事実です。2008年4月2日にはFRBバーナンキ議長が「アメリカ経済の景気後退入りもありえる」とサブプライムローンの発生以降初めて景気動向について言及しました。今後の日本の株式市場の展望を考えるには米の景気はもちろん、米ドルの動向についても注視する必要があります。

今野 祐希
会計・税務の目線でIRを斬る税理士の卵。趣味はツーリングとサーフィン。

2008年02月05日

上場後約3年以内の企業のFAQ(よくあるご質問)掲載状況

上場間もない企業のIRご担当者からよく聞く課題は、その企業の「認知度向上」の場合が多い。
果して、企業認知度とはどのように高めていくべきであろうか?
「当社はB to B企業だから・・・」、「規模が小さいのでなかなか・・・」など認知度が上がらない
理由は処々あるのだろうが、投資家はそれだけの理由でその企業を見切ってしまうものだろうか。

私の経験では、(個人・機関)投資家やアナリストは、通常の人よりも知的好奇心の強い人が
多いように思われる。特に熟練した投資家は、結果としての株価よりも、経済動向や業界の将来見通し、技術革新など様々な変化要素とそこから繰り広げられる「読み」を組立てることに快感を持つ人が多い。その「読み」の具体的な成果が、株価でのキャピタルゲインの享受であることをよく知っている。

投資家にとって認知度がないことは、決して買わない理由にはならず、むしろ他の人が見向きもしないが、その企業の良いところを知り行動に移すことはまさに知的好奇心をくすぐるポジティブな要因ではなかろうか。従って、企業は現在の認知度の高低に関わらず、投資家の知的好奇心に応えるような情報を発信していく必要があると考える。この繰り返しが信頼性を伴った認知度向上につながるはずである。

子供が「なぜ?」「どうして?」としつこく質問を繰り返すのは、何に対しても好奇心が強くそのことに興味があるからであるとよく言われている。投資家も真剣かつ興味がある場合には、様々な質問を繰り返し、納得して行動を起こす(この場合には、株式を購入するかどうかを決める)。

この投資家の知的好奇心に応えるのに絶好なコンテンツ形式が企業IRサイトにあるFAQ(よくあるご質問)である。

企業は、投資家やアナリストから様々な質問をぶつけられているはずである。すべてではないにしてもそれらの質問に、企業は何らかの対応をしているにも関わらず、投資家の知的好奇心そのものである質問と回答をほとんど開示していない。もちろん心ない質問をぶつけてくる投資家も中にはいると思うが、明らかに必然的な質問には企業はFAQという形式を通して随時開示していくことが、投資家の知的好奇心に応える情報の発信方法と言える。

当社では、上場後約3年以内の企業477社のFAQ(よくあるご質問)掲載状況を調査してみた。
その結果、コンテンツとしてFAQ(よくあるご質問)またはその類のメニューを表示している企業数は、270社(57%)であった。この社数自体も予想以上に少なかったのだが、さらに投資家の知的好奇心を満たす内容になっていた企業はわずかであった。多くの企業が上場時に一度更新したきりとしか思えない株式名義書換手続きやコード番号に答えるだけの非常にベーシックなFAQであり、その後寄せられたであろう質問への回答を掲載している企業は少ない。コンテンツの更新頻度を上げる効果も含め、IRご担当者はFAQを通じたアクティブな情報開示手法を取り入れてみてはいかがであろうか。興味を持ってサイトを訪れた投資家に対しては、開示姿勢とともに企業の印象を強める効果はかなり大きいであろう。定量的な評価だけでは不十分であろうが、参考までにFAQの数と社数のグラフを以下に掲載しておく。ちなみに今回調査したFAQを掲載している企業の中でFAQ数が最少の企業は3問、最多の企業は54問、平均数は15問であった。

上場約3年以内の企業のFAQ数別企業数分布

宮部 明郎
大手証券会社、トムソンコーポレーション、FISCO、IFISjapanを経て、2007年より当社に参画。
投資情報とIR情報は表裏一体の関係であり、投資家、発行体企業双方にメリットのある情報発信手法を目指し、奮闘中。主な著作に「相場への新たなるアプローチ」(共著)。

2008年01月31日

IRサイトレビュー:海外のユニークなサイトを紹介!

最近では国内のIRサイトも質、量ともにかなり充実してきた。様々なサイトランキングや評価基準が公表される中で、一定レベルを実現することはさほど難しいことではない。制度開示の充実で上場企業全体の開示レベルも底上げされ、比較可能性は格段に高まった。コンテンツが充実したら、次は見せ方・表現で差別化をしてみてはどうか。その意味で欧米のIRサイトはベストプラクティスの宝庫である。投資家の「痒いところに手が届く」
様々な工夫や事例を紹介していきたいと思う。まずはIR活動の様々な分野で優秀賞を受賞するGEに注目してみよう。

【今回の注目サイト!:ゼネラル・エレクトリック(GE)】

「株主プロフィールで自社の銘柄特性をアピール」
下記はGEのStock Information以下のOwnership Profileである。

http://www.ge.com/investors/stock_info/ownership_profile.html

株主判明調査結果は社内限りの情報と思われがちであるが、実は自社の銘柄をアピールする有力な材料となる。GEの場合は金融情報会社が提供する公表データをベースとした保有者情報を「機関投資家への集中度」と「投資スタイル」別に開示している。「集中度」からは、GEを保有する機関投資家の上位何社が何割を保有しているかがわかり、流動性の一つの目安となる。一方「投資スタイル」は、成長株投資、バリュー株投資、インデックス、インカム投資といった大項目別とさらにその詳細な分類別に機関数、保有比率、保有額などが開示されている。これを見るとGEは成長性、割安性の両面をあわせもつ銘柄であることがわかる。まさに自発的開示に客観性を付加できる有益な情報だ。


山本章代(アレックス・ネット株式会社 取締役)
海外企業のIRに詳しい。宣伝会議発行の「PRIR」誌に「海外企業のアニュアル・レポート解説」を連載(2005年4月~2006年4月)。

2008年01月17日

子供目線で考えてみよう。

 2007年のキーワードは「偽」であった。昨日も、製紙会社トップが再生紙年賀はがきの古紙配合率を偽装していたと陳謝していた。本当にニッポンという国はどうしちゃったのかな?と思えるような陳謝の嵐の一年だったと思う。

 2008年では、年初からサブプライム問題で株安の状態が続いている。企業のIR担当者に聞いてみても、どの業界も元気がない。決してIRの最終目標が株価ではないとしても、やはり気になるものである。「どのようなIR活動をしたとしても、今の市況では反応が鈍いよね?」というのが、担当者の本音のようだ。

 そのような時に、ワタシはムスコからあることを学んだ。さすが、5歳の保育園児である。物事全てを本能でしか判断していない。好きなものは好き。キライなものはキライ。きれいなものはきれい。ばっちいものはばっちい。彼の発言は、親が教育し、誘導しない限り、思ったことを竹を割ったように話しだす。たかが子供のいうことじゃないか。と思うのは、既に俗世間にまみれてしまった大人の目線である。その目線で物事を行った結末が企業の不祥事の発端だったのではないだろうか?

 この位は大丈夫。この位ならきっと許されるだろう。こうしないと品質が保てない。しかも誰も損はしないじゃないか。私達が黙っていればわからないよ・・・・。嘘をつくことはいけないことだとムスコはいう。そのように保育園で先生が教えてくれたと、目を輝かせて自慢げに話している。自分達の幼少の頃も、たしかに周りの大人からそのように教わった。上場企業のトップやボードメンバーも、そのような人間としての基本的なことは、誰かが必ず教育してくれたはずである。

 今年こそは、昨年のような「偽装」に揺れた低レベルの企業不祥事のニュースはみたくないなぁと思っていたが、やはり「大人」の感覚でビジネスをしてはいけない時代かもしれない。幼少の頃のような純白な感覚、いいものはいい。駄目なものは駄目。という極めて簡単だが、勇気のいる決断を企業トップは求められている。それを誤ると、いくらいいIRをやっても駄目である。駄目なことをやった企業は、社会から退場を迫られる時代なのだ。

大坪和博(アレックス・ネット株式会社 取締役)
『金融から怪獣』をIR目線で日々研究してます