手段も評価の対象だ。
王子製紙による北越製紙へのTOBが、王子の断念と言う形でひとまず決着した。
その結果について様々な人が、各々の立場からコメントしているのはご存知の通りであるが、王子のとった対応そのものについても議論が分かれている。
インベストメントバンクやM&A業界人、多くの経済学者は、「王子は甘い。スピードが足りない。公表してから買い始めるのは愚の骨頂。差し止め請求をすべき。」等々とする。
これらはその視点を経済合理性に置いているため、必然的に王子の対応策が手ぬるいとの批判的なコメントなる。
一方、中には、「王子の対応はさすが業界の雄。大人の対応。」として、「TOBは失敗したが、企業評価にはそこそこ貢献したのではないか。」という意見がある。いわば、「相撲に勝って勝負に負けた」と。
この評価の違いはどこからくるのか?それは「手段」に対する評価の違いからくる。即ち「目的のためなら手段を選ばない。」ことをどう捉えるかである。
前者は、極端な話、法律を守れば良い。それに対し後者は法律以外にも、商道徳、倫理、感情等にまで、評価基準は広がる。
後者は前者よりも明らかに非効率である。しかも基準はTPOで変わり、その主張は今ひとつ歯切れが悪く見える。討論などでも劣勢だ。
しかし、それを非効率といって良いのか? 効率の時間軸はどうなっているのか?
TOBに限らず企業の円滑な事業展開に際し、目的実現のために採用する手段が社会からどのように評価されるかが、ますます重視されてきている。劇場型社会のなせる業だろう。
信じ採用する手法が、社会から信任されるためには、日頃から「あの企業なら、中長期的に見て企業価値を向上させるはず。」という信頼を醸成し世論を形成しておくことが必要だ。
正に日頃の広報・IR活動を、戦略的かつ丁寧に行うことが求められているのである。
加藤正明(アレックス・ネット株式会社 代表取締役)
企業価値と投資価値向上の手段としてのIRを、より尖らせるべく奮戦中