「やはり、 歴史は繰り返す。 のか?」
数年前とはうって変わり、企業業績の好調な話題が続く中で、当局から不備な情報開示を指摘されている企業も存在する。その事実の経緯や開示状況を見るにつけ、「歴史は繰り返す」と思わざるを得ないのは私だけか。
現代史に造詣の深い保坂正康氏の本に、以下のようなことが書かれている。
「第二次世界大戦時、日本軍は戦況が不利になるにつれて、虚偽情報を発表した。そしてさらにどうしようもない状況になった時には、発表そのものをしなくなった。」
また、「国民にウソをつき、何度も繰り返す」「関心をアメリカに向ける」「(海軍)大本営は(陸軍)大本営に情報を伝えない」などの事実があったそうだ。
それによく言われているように、言葉のすり替え(撤退、退却→転進、全滅→玉砕など)も少なくなかった。
一方、1000年も2000年も前に書かれた軍事戦略論は未だに広く読まれている。科学技術の進化発展とは大違いで、これはまさに人間の本能、本質は時間が経ってもほとんど変わらないということを示している。
さて、翻って現代。決算発表前。
「当期末の業績が固まりつつある。前回の説明会で前向きな計画を発表したため株価は堅調である。しかし、営業からは思わしくない結果が上がってきている。そのまま発表したら株価はどうなるのか・・。」
IR活動ご担当の方は、胃が痛くなる毎日かも知れない。このような時IRが悪い会社は、先ずは以前の決算短信と比較して文字量が少なくなることが多い。次に、数字や淡々とした事実が少なくなり、逆に装飾系や抽象的な言葉が多くなる。また、「減少した」「下降した」と言う事実を端的に表す単語を、「布石を打った」「時間がかかっている」などの単語に変換することも見られる。あるいは、取り組み姿勢に関する文章と、その成果を表す文章が論理的に接続しなくなったりする。
まだまだ事例はたくさんあるが、紙面の都合でこの辺りで。
体験とは偶然の賜物であり、二度同じことが起きるとは限らない。それ故、賢者は長年の歴史に刻まれてきた「真理」を将来の道標にすべきであれば、賢明なIR活動ご担当の方は、歴史から現在の貴社のIR活動をチェックし、(開示のみならず経営面においても)将来のために有効な布石が打てるように思える。
一方、個人投資家の方々は、先人が遺した貴重な歴史と、気になる企業の情報開示を照らし合わせることで、この面からも有効な投資判断の材料に出来ると考えている。
以上
加藤正明(アレックス・ネット株式会社 代表取締役)
企業価値と投資価値向上の手段としてのIRを、より尖らせるべく奮戦中