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「Intelligent IRO」

アナリスト・投資家の方々と日ごろお話しする機会があると、情報を開示する企業側の『発したい情報』と情報の受け手側の『知りたい情報』にギャップがあることにしばしば気付かされる。先日某社の説明会を受けて、ご意見を伺った多くのアナリスト・投資家が『概ね良かったが』と前置きした上で、異口同音に当該企業が属する『業界の動向』と『当該企業の市場ポジション』については判りづらかったと苦言を呈したのは印象深かった。
もっとも企業分析において彼らが最も重視する項目が、定量面では『直近の業績』、定性面では『個別企業の優位性・特性』であることを考えれば、この不満は当然と言わなければならないだろう。一方、IR担当者から見ると自社の競合優位性等は、最重要な企業秘密と密接に結びつく情報であり、開示に限界があることは想像に難くない。
IRとは、一筋縄ではいかないものだと痛感していたところIRの果たすべき別角度の役割を目にする機会があったのでご紹介したい。NIRI(全米IR協会)が発刊しているIR updateを要約すると以下のような内容である。
《抄訳引用》
元来優秀であったIRO(IR担当者)は、近年一層優秀になってきているのがわかる。IROは、競合情報を独自に調査し、報告しているのである。IROは、IRコンサルタント等に自社および他社さらに業界全体につき、データ収集・分析を行い、共有情報として自社の競争優位を築き上げる(または維持する)ための一助としているのである。
競合情報には、テクノロジーや他社が意思決定に採用している情報源等多岐にわたる。効果的な情報収集を行えば、当該企業は成長戦略や市場変化への対応の決定に有効な情報を手にすることになる。大手金融会社キーコープのIR関連V.P. M. Conway氏は「今日ではIRの最大の業務のひとつは内部向け情報の発信である。」と話す。
高齢者向け生活サービス関連の中小型株会社であるサンライズシニアリビングのIR関連V.P. D. Spille氏は競合環境の厳しい企業ほどIROによる競合調査は重要になってくるという。
同氏によると競合情報には2種類ある。第一は営業チーム・マーケティングチーム向けに自社がシェアを奪った(あるいは失った)理由を伝えたり、経営上層部に競合他社のマーケットシェア動向を報告したりする内部向け情報である。第二が投資家・アナリストへの情報提供を行う外部向け情報である。IROは特に競合企業と話したばかりのアナリストとのミーティングや電話の応対時には競合の活動につき十分理解している必要がある。「その際に競合情報に基づき『弊社でも同種の商品を生産しており、競合他社よりもシェアを確保している』と言明できれば、貴社の信頼性は高まる。」競合他社が発信した誤った情報や分析を正す際に重要な情報になるわけだ。
競合情報のエキスパートになることはIRO自身および会社に大きな利益をもたらす。成功事例のベンチマークを行う際や他社比較から自社の企業価値を理解する際、現在および将来の自社のポジショニングを設定する際に使われる。他社の財務資料分析や電話でのアナリスト向け開示を日頃行っているIROの集めた信頼性の高い競合情報は経営トップにとって重要なガイドになる。

人材配置:たとえば競合他社が公共部門への販売を伸ばしている場合営業部門の増員や営業長の転換、マーケティングターゲットの修正などを行うだろう。
資源配分:たとえば他社比較によると自社のR&D支出は妥当か?アウトソーシングすることで競争力の高い商品開発が可能になるか?
価格設定・開発スピード:他社の商品開発が遅れている際に自社の類似商品が先行できないか?
コンピュータの巨大企業DellのIR担当V.P.であるL. Tyson女史は、「従業員および経営陣が(競合)情報をもっている企業ほど市場にインパクトを及ぼす優れた経営判断を行える」と話している。

米国での徹底された取り組みの水準に一気に追いつくことは現状のマンパワーでは困難という企業も多いであろう。しかし貴社でもIR担当者が身を粉にして調べ上げた競合や自社に関する情報が、開示に適さないという理由から自社で眠っているという事態が放置されてはいないだろうか。その情報(Competitive Intelligence)を関係部署およびトップマネジメントで共有し、経営判断の指標として『活きたデータ』に再生することで、経営判断は研ぎ済せれINTELLIGENTになることが期待できる。
また情報を吟味する過程で自社が開示すべき情報の線引きが、より明確な社内コンセンサスとなってIRが質的に一層向上していく効果も期待でき、IRのINTELLIGENCEが高まっていきそうである。次回はこうした社内IRプロジェクトの展開に成功した中小企業の事例を挙げ、実践に向けたヒントをご紹介していきたい。


Hiroshi M.
(気持ちは)いつもルーキー。IRの常識を疑う事からはじめるアプローチで企業と社会の架け橋を目指すパイオニア。座右の銘は『温故知新』

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2006年11月07日 18:00に投稿されたエントリーのページです。

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