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2006年12月 アーカイブ

2006年12月06日

ウルトラマン的マーケティング活動に注目しています!

 私は、4歳の息子を持つ父親である。子供の見たいヒーロー物のテレビ番組を見ていると、
複雑な気持ちになる。それは、過去私達が熱中したヒーローが出てくることである。
 その代表的なものは、ウルトラマンメビウスである。タローが出てきたり、レオが出てきたり、ウルトラの父も出てくる。しかも、怪獣も過去、見覚えのありそうなものが多い。
子供たちにとっては、全てが新鮮なヒーローであり、ワクワクしながらテレビにかじりついている。この風景は、多分私達と変わらないような気がする。いつの時代もテレビの中のヒーローは、男の子達にとっては大切な存在なのだ。

 また、自分達が熱中したヒーローや怪獣を再びライブで見てしまうと、なつかしさと同時に子供たちに向かってレクチャーしてしまう。その結果、家庭の中で「父親」として存在をアピールできるのだ。「パパってすご〜い。」と息子は目をきらきらさせて、感心する。そこで、はっと我に返る。自分達の世代を巻き込んだ企業戦略が、ひそかに進行していることに気がついたのである。

 昨今の企業戦略は、国内の少子高齢化、人口減少社会等といって、海外市場に目を向けることが散見される。しかも、そこにあるのは効率性とグローバルスタンダード。マーケットシェアを高める王道といえよう。しかし、それは既存のターゲットに対しては有効ではあるが、どのマーケットも遅かれ早かれ成熟期を迎えてしまうことになる。

では、どうするか?企業のマーケティング担当は常にこの課題に直面している。成熟化したマーケット規模の成長はせいぜい数%程度、しかも競合がひしめく市場では、マーケティングコストも馬鹿にならない。

そこで、冒頭のウルトラマンである。男児だけをターゲットとしたプロモーションから、親子を巻き込んだプロモーションへと進化している。それは、今までのターゲットとは違うマーケットの創造を意味している。しかも、そのために新たなキャラクターを開発したりするのではなく、過去の資産を有効活用している。それには、多額のマーケティング予算は必要か?答えはノーである。なぜなら、今まで築いてきたブランド資産を有効活用しているに過ぎない。このように持てる資産を最大限有効活用して、新たなマーケットを創造する。ウルトラマンの場合は、親子消費である。少なくとも、父親を味方につければ、家計の財布は緩む。しかも、息子との共通会話を渇望する父親にとっては、片腹痛い演出もある。単純に懐かしいのだ。しかも子供に自分が味わった夢を移植できる喜びは、未開拓な体感であるだけに、熱中する親もいるという企業側の読みもある。このような新たな消費スタイルを創造するマーケットはじわじわと、しかし確実に成長する可能性を秘めている。実にココロにくいと考えてしまい、その戦略にまんまとはまる自分がいることに気がつくのだ。戦略とともに、それを実現させたことに対して、実に複雑な気分になるのだ。

 企業の成長戦略を理解し、市場にアピールすることがIRコンサルティングの基本である。その大前提として、企業がどのマーケットをドメインとしているのか、そのマーケットで競合に伍して成長するために有効な資産は何を有しているのか?そして、その有効資産が生み出す潜在マーケット規模までも投資家に刷り込むことができれば、成長戦略の8割は描けたようなものだといえる。

あとは、消費者が満足感をもってそのマーケットに参入してくれるかどうか、熟考されたマーケティングプランの実行と成果にかかっている。しかし、IRコンサルタントの苦悩はそこからスタートする。その実行と成果を挙げることができなければ、IRは成立しないからだ。なぜならば、コミットメントを実現し、投資家からの信頼、市場からの評価を得ることが重要であることを、企業の経営層に納得させなくてはならないからである。

構想レベルで熟考を重ねた上で、実現は先送りとなってしまうか?それとも、試験的であれ、成果をあげることができたか?もしくは、そのためのチャレンジを積極的に行ったか?リスクを取って投資に踏み切ったか?IRコンサルタントとしては、戦略を描くことは出来ても、企業のスタッフを実行させる陣頭指揮は取れない。ゆえに苦悩するのである。企業が新たな成長マーケットを創造できるがどうか。そのリーダーシップを発揮するのは、企業のトップであり、経営層である。IRコンサルタントとして、最も戦略レベルで近いポジションにいながら、市場へのコミットメントを実現するキーパーソンは、自分ではない。そこは、クライアント自身である。
IRのミッションの1つは、市場へのコミットメントと、その報告(成果)の善循環によって、企業価値を高めることである。

企業の成長戦略をよりよいものへと昇華させ、それを実現へと導くことも、その意味からするとIRコンサルティングの1業務なのかもしれない。ウルトラマンの戦略にはまりそうな自分を振り返ってみると、本当にIRとは、非常に奥が深いビジネスであると感慨深くなってしまう。ホントに複雑な気分になるのだ。


大坪和博
 『金融から怪獣』をIR目線で日々研究してます

2006年12月15日

平常心の難しさ

1939年1月場所4日目、双葉山は安藝ノ海に70連勝を阻止された時、勝負終了の土俵上で、いつもと変わらず穏やかに礼をした。あまつさえその日の夜、師と仰ぐ安岡正篤に「我未だ木鶏たりえず」と打電したのは有名な話である。
70年近く前のこの逸話が、未だ日本人の間で根強く語られ続けるのは、この時の双葉山の「姿・振る舞い」が美しい、卑近な言葉で言うとカッコイイと思っている人たちが多いことの証左といって良い。そして、自ら行うのは難しい、出来ないということとほぼ同義であろう。

普通の人は、勝てば喜びガッツポーズをし、負ければシュンとして落ち込む。王監督が中学生だか高校生の頃、試合に勝って派手に万歳をした時、兄の鉄城氏から鉄拳で殴られたそうな。曰く「負けた人の気持ちを考えろ!」と。それ以来王監督は、ホームランを打っても、試合に勝っても決して派手なパフォーマンスをしなくなった。確かにホームラン世界記録樹立のときも、ピッチャーに向けてではなく観客に対して控えめに両手を上げただけだった。

さて、或る外食企業の有価証券報告書、決算短信を過去6年間分見ていた。事業環境が厳しい外食業界のご多分に漏れず同社も厳しい決算が続いているが、業績が悪くなったのは2002年3月期からである。当然の事ながら株価はその1年以上前から大幅な下落傾向になっている。

業績が悪くなり始めた2002年版有価証券報告書の「事業の状況」では、「厳しい決算を迎えることになりました。」と率直にコメントしている。さらに「売上、利益、共に年度計画を下回った決算は今期が始めてであります。」と書かれている。直向な感じがするコメントである。(細かいことを言うと「今期」ではなく「当期」)
翌2003年は経常利益、当期利益ともに減少したが、この年の有報でも、「前年実績を下回る結果となりました。」と記載してある。

一方、翌年の2004年3月期の有報。この年も経常、当期利益共に減少している。しかし、定性的記述は「増収減益となりました。」と書かれている。
ただし、この会社の売上高はこの間も増加し続けている。穿った見方をすると「減益」を「増収」と、初めてセットにしたようだ。(外食だからか)
2005年は、経常は増益となったものの当期利益は減少したにも拘らず、概略的な定性コメントはない。そして、再び経常、当期利益共に減少した2006年3月期。2005年同様業績の概略を伝える定性コメントはなかった。淡々と売上高〜当期純利益の数値が載っているだけである。

ここの会社は業績が良かった時は、IR活動も熱心でその評価も高かった。しかし、最近ではその評価も今ひとつのようである。私はここの会社の社長とは何度かお会いしたことがあるが、アグレッシブ、かつ真摯・紳士であった。また、社員の方々も大きな声で挨拶してくれたのが印象にある。
業績が良くても悪くても立ち位置を変えずに淡々と、しかもかつてのような高いレベルのIR活動を続けて欲しいと思う。そして、回復の確信が持てた時、業績を先取りする表現が表れることを期待したい。

では、これからこのお店に呑みに行ってきます。


加藤正明(アレックス・ネット株式会社 代表取締役)
企業価値と投資価値向上の手段としてのIRを、より尖らせるべく奮戦中

2006年12月19日

世界におけるIRムーブメント〜英国IRマガジンのIRアワード講評より〜

今回は英国IRマガジンが毎年発表する世界のIR優良企業賞の審査講評を紹介する。同誌がコメントするように、世界中の投資家、アナリスト5000名以上を対象としたIR実態調査は、世界中のベストプラクティスを世に知らしめると同時に、IRが抱える重要な課題を浮き彫りにするという意味で極めて有用である。

1.情報は頻度か、内容か?
米国のセルサイド、バイサイドともに8割近くが、企業から配信される日常的なIR情報に満足する一方で、ネガティブ情報の配信においては情報の配信回数より、中身を重視して欲しいとの要望があるという。何度もコメントするより、一度で正確な情報を配信するほうが評価されるということだ。

2.各国様々なIROとマネジメントの関係
 「IROはマネジメントに直接市場の意見をフィードバックすべきか」との質問に対し、米国の市場関係者の過半数が「そうすべきである」と回答している。一方、カナダではCFOを介してマネジメントにフィードバックするのが一般的で、こうした質問自体に戸惑いを見せている。英国ではCEOによる過剰サービスとも言えるIRに「経営は大丈夫なのか」といった懸念を抱く声が多くなっているという。

3.ボードメンバーに一定数の女性とマイノリティを選出すべきか
ボードメンバーに女性とマイノリティが少ないのは世界的傾向であるが、これは問題視すべきか?ノルウェイやスウェーデンでは取締役会における一定数の女性選出を義務付けた法案が提出されたという。北欧の市場関係者は、取締役会メンバーの多様化には賛成するものの、法案に対する反応は冷ややかだ。回答者の多くが「女性であること」よりも「資質」で判断すべきであるとコメントしている。

まさに各国各様に試行錯誤している様子が伺われるではないか。
情報配信の頻度と内容に関して言えば、どちらも重要な要素だ。しかしIRにおいては適時性、公平性、正確性という原則は守りながらも、会社の置かれた状況から、市場の信頼に足るコミュニケーションとは何かを常に考えて行動しなくてはならない。適時性を追及するあまり、正確性が犠牲になれば市場からの信頼は得られない。未決事項が多いニュースを拙速に配信しても、それは投資判断材料としては有用性が低い。市場から信頼を獲得するには企業自らが主導権を握り、状況を正確に把握し、タイムリーに開示すべきか、あるいは時間をかけてより正確な情報を提供するかについて判断する必要があろう。そのためにはきちんとした開示方針の確立が重要と考える。
IROとマネジメントの関係については、日本においてはトップ直結のIRが多くなりつつある印象を持つ。これはトップとの直接コンタクトを求めるマーケットからの要請が強く反映されているのだろう。しかし英国の市場関係者が懸念するように、トップの本業は「経営」である。市場からのフィードバック機能が確実に担保されていれば、必ずしもトップ自らがすべてのIRをこなす必要はないのではないか。CEOがIRに費やす時間と業績の関連性を調査したら興味深い結果になりそうだ。
最後にボードメンバーについてであるが、性差や人種を基点とした議論は間違いである。そもそも性差や人種を代表することが会社経営における最良の「解」を引き出すものではない。そこには会社の利益を代表するプロフェッショナルが必要だ。とは言っても女性やマイノリティのボードメンバーが少ない現状であることは事実であり、むしろ性差や人種を超えて、あらゆる人々にボードメンバーの候補者となる機会、つまり上級管理職へのキャリアパスを確保できる仕組みを作るほうがマネジメント層の人材難を解消する上でも重要であろう。


山本章代(アレックス・ネット株式会社 取締役)
海外企業のIRに詳しい。宣伝会議の「PRIR」誌に「海外企業のアニュアルレポート解説」を連載。(2005年4月〜2006年4月)

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