ウルトラマン的マーケティング活動に注目しています!
私は、4歳の息子を持つ父親である。子供の見たいヒーロー物のテレビ番組を見ていると、
複雑な気持ちになる。それは、過去私達が熱中したヒーローが出てくることである。
その代表的なものは、ウルトラマンメビウスである。タローが出てきたり、レオが出てきたり、ウルトラの父も出てくる。しかも、怪獣も過去、見覚えのありそうなものが多い。
子供たちにとっては、全てが新鮮なヒーローであり、ワクワクしながらテレビにかじりついている。この風景は、多分私達と変わらないような気がする。いつの時代もテレビの中のヒーローは、男の子達にとっては大切な存在なのだ。
また、自分達が熱中したヒーローや怪獣を再びライブで見てしまうと、なつかしさと同時に子供たちに向かってレクチャーしてしまう。その結果、家庭の中で「父親」として存在をアピールできるのだ。「パパってすご〜い。」と息子は目をきらきらさせて、感心する。そこで、はっと我に返る。自分達の世代を巻き込んだ企業戦略が、ひそかに進行していることに気がついたのである。
昨今の企業戦略は、国内の少子高齢化、人口減少社会等といって、海外市場に目を向けることが散見される。しかも、そこにあるのは効率性とグローバルスタンダード。マーケットシェアを高める王道といえよう。しかし、それは既存のターゲットに対しては有効ではあるが、どのマーケットも遅かれ早かれ成熟期を迎えてしまうことになる。
では、どうするか?企業のマーケティング担当は常にこの課題に直面している。成熟化したマーケット規模の成長はせいぜい数%程度、しかも競合がひしめく市場では、マーケティングコストも馬鹿にならない。
そこで、冒頭のウルトラマンである。男児だけをターゲットとしたプロモーションから、親子を巻き込んだプロモーションへと進化している。それは、今までのターゲットとは違うマーケットの創造を意味している。しかも、そのために新たなキャラクターを開発したりするのではなく、過去の資産を有効活用している。それには、多額のマーケティング予算は必要か?答えはノーである。なぜなら、今まで築いてきたブランド資産を有効活用しているに過ぎない。このように持てる資産を最大限有効活用して、新たなマーケットを創造する。ウルトラマンの場合は、親子消費である。少なくとも、父親を味方につければ、家計の財布は緩む。しかも、息子との共通会話を渇望する父親にとっては、片腹痛い演出もある。単純に懐かしいのだ。しかも子供に自分が味わった夢を移植できる喜びは、未開拓な体感であるだけに、熱中する親もいるという企業側の読みもある。このような新たな消費スタイルを創造するマーケットはじわじわと、しかし確実に成長する可能性を秘めている。実にココロにくいと考えてしまい、その戦略にまんまとはまる自分がいることに気がつくのだ。戦略とともに、それを実現させたことに対して、実に複雑な気分になるのだ。
企業の成長戦略を理解し、市場にアピールすることがIRコンサルティングの基本である。その大前提として、企業がどのマーケットをドメインとしているのか、そのマーケットで競合に伍して成長するために有効な資産は何を有しているのか?そして、その有効資産が生み出す潜在マーケット規模までも投資家に刷り込むことができれば、成長戦略の8割は描けたようなものだといえる。
あとは、消費者が満足感をもってそのマーケットに参入してくれるかどうか、熟考されたマーケティングプランの実行と成果にかかっている。しかし、IRコンサルタントの苦悩はそこからスタートする。その実行と成果を挙げることができなければ、IRは成立しないからだ。なぜならば、コミットメントを実現し、投資家からの信頼、市場からの評価を得ることが重要であることを、企業の経営層に納得させなくてはならないからである。
構想レベルで熟考を重ねた上で、実現は先送りとなってしまうか?それとも、試験的であれ、成果をあげることができたか?もしくは、そのためのチャレンジを積極的に行ったか?リスクを取って投資に踏み切ったか?IRコンサルタントとしては、戦略を描くことは出来ても、企業のスタッフを実行させる陣頭指揮は取れない。ゆえに苦悩するのである。企業が新たな成長マーケットを創造できるがどうか。そのリーダーシップを発揮するのは、企業のトップであり、経営層である。IRコンサルタントとして、最も戦略レベルで近いポジションにいながら、市場へのコミットメントを実現するキーパーソンは、自分ではない。そこは、クライアント自身である。
IRのミッションの1つは、市場へのコミットメントと、その報告(成果)の善循環によって、企業価値を高めることである。
企業の成長戦略をよりよいものへと昇華させ、それを実現へと導くことも、その意味からするとIRコンサルティングの1業務なのかもしれない。ウルトラマンの戦略にはまりそうな自分を振り返ってみると、本当にIRとは、非常に奥が深いビジネスであると感慨深くなってしまう。ホントに複雑な気分になるのだ。
大坪和博
『金融から怪獣』をIR目線で日々研究してます