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2007年09月 アーカイブ

2007年09月21日

海外ロードショー・レポート(米国編1)

クライアントにアテンドしてニューヨーク、ボストン、シカゴの機関投資家を訪問してきた。ニューヨークではヘッジファンドを含む4件を訪問。いわゆる「有力投資家」と言われる大手機関投資家の中に、ヘッジファンドが顔を見せ始めたのはここ数年の傾向だろうか。株主判明調査会社にもプロファイリングされていない会社が続々とファンドを立ち上げ始めている。
前回訪問時からの変化や足元の業績に話は集中する。質問は極めて単純明快。日本のアナリストのような微に入り、細にわたる質問は皆無である。彼らが細かいデータを分析しない訳ではないが、それらはメールや電話によるヒアリングでも可能だ。売上は上がったか、利益率は改善しているのか、といった根本的な問いかけに対し、トップがどのような表情で答えているかをじっくりと観察しているようなのだ。かつて、外資系運用会社のファンドマネージャーが、「我々は企業のファンダメンタル(実態)を肌で感じるために、わざわざ海外から日本の経営者に会いにくるのだ」と言っていたのを思い出した。
15年以上前のことになるが、かつて米国機関投資家は「アクティビスト」と言われていた。その時代は確かに「対話」より「要求」をつきつける投資家が多かった気がするが、未成熟な日本の資本市場に痺れをきらした彼らの厳しい言動が、国内では過敏に受け取られた可能性はあるだろう。少なくとも今回ミーティングで出会った投資家は決して過激ではなく、資金提供者あるいは企業のサポーターとして求める企業価値についての深遠な思考の持ち主であった。次回は彼らの興味深いコメントを紹介したいと思う。


山本章代(アレックス・ネット株式会社 取締役)
海外企業のIRに詳しい。2005年4月から2006年4月まで、宣伝会議発行の「PRIR」誌に「海外企業のアニュアル・レポート解説」を連載。

海外ロードショー・レポート(米国編2)

「経営は生態系」

ニューヨークで訪問した世界最大手の一角をなす年金基金運用機関のファンドマネージャーが「生態系」という金融の世界ではあまり耳慣れない言葉を口にした。配当政策に話が及んだときである。「生態系」とは、自然界のある地域に住むすべての生物群集とそれらを取り巻く環境を一体として見たものである。つまり経営とは、経営者の思想(ビジョン)に基づいて形成された有機体であり、そこから導かれる目標、その結果として実現される利益やその配分は、すべて単体でとらえられるべきものではないということだ。昨今、日本企業においては連結配当性向30%というのがいわば流行のようであるが、適正な利益配分は企業体によって当然異なるものであり、「横並び」への違和感を示すとともに、説明がつけば必ずしも高くある必要はないと語ったのである。
シカゴで面談した投資家は、自らもファンドに出資するまさに資本家である。彼もまた利益配分(キャッシュの使途)に対して成熟したリスクテイカーとして考えを語っていた。例えば、キャッシュにはその1円1円すべてに目的があり、社員に支払うキャッシュ(報酬)は、彼らの幸せのためではなく、生産性向上のためであることを意識すべきである。そして役職員報酬、設備投資、研究開発、買収資金など成長のためにシビアに配分されたあとのキャッシュはすべて還元すべきであるという。
両者とも多くの日本企業はいまだ「数合わせ」の数値目標であり、その前提となる思想や成長のための道筋がわかりにくいと語っている。
まさに経営とは、企業を取り囲むステークホルダーや、成長とともにリスクが並存する環境との関係性でとらえるべきもので、その「生態系」を適切に維持することなのだ。


山本章代(アレックス・ネット株式会社 取締役)
海外企業のIRに詳しい。2005年4月~2006年4月まで、宣伝会議発行の「PRIR」誌に「海外企業のアニュアル・レポート解説」を連載。

2007年09月25日

「今年も日本株の外国人保有比率は増加しそうな勢い」

毎年、東証から「株式分布状況調査の調査結果について」という資料が6月半ば近辺に発表されている。その資料の中に、投資部門別株式保有比率が示されている。

近年、この投資部門の中で特に注目されているのが「外国人」である。平成18年度まで4年連続で保有比率が増加しており、直近3年間の外国人の保有比率は平成16年度23.7%、平成17年度26.7%、平成18年度28.0%と単独1位に君臨しており、まさに日本株最大の保有者となっている。
平成19年度の正式な保有比率の発表は来年の6月まで待たなければならないが、今年に入ってからも日本株を買い越しているのは圧倒的に外国人である。
平成19年度8月までのデータにおいては、外国人は1月から7月まで継続して買い越しており、8月に今年初めて売り越しに転じている。この売り越し額もさほど大きなものではなく、通常の買い越し額1ヶ月分程度となっている。

さらに注目すべきは、売買金額のシェアである。買い越し、売り越しとは買い金額と売り金額の差し引き金額のことだが、売買金額に目を向けてみると、外国人が買い、売りともに売買代金の50%~60%程度を占めている。
つまり「外国人」は日本株最大の保有者であるとともに、最大の取引者でもある。外国人に続く大きな取引者は個人であり、30%程度である。つまり外国人と個人でほぼ80%以上の株式の取引を行っていることになる。オンライントレードの普及によりデイトレーダーが1日何回も取引しているにも関わらず、個人投資家は外国人の半分程度の取引量であることからも、いかに外国人が多大な金額を日本株に投資しているかがわかる。
今年8月までに外国人は日本株を6兆円以上買い越しており、この水準はすでに昨年の買い越し額を上回っている。今後外国人が売り越しに回れば、年間を通じては昨年を下回る可能性はあるものの、それでも外国人保有額の増加は間違いなさそうであり、他の投資部門で目立った買い越しをしている部門がないことからも保有比率は昨年を上回るものと予想される。

IRの世界では株主構成やIR活動の対象投資家を考える上で、これらの比率を参考にする場合が多いが、今年に引き続き来年も外国人へのIR活動は各社にとって大きなテーマとなろう。参考までに以下のリンクに東証発表データを基に当社で作成した18年度および19年度1月-8月の投資部門別の売買差し引き金額の表を掲載しておく。

投資部門別売買差し引き金額

宮部明郎
大手証券会社、トムソンコーポレーション、FISCO、IFISjapanを経て、2007年より当社に参画。
投資情報とIR情報は表裏一体の関係であり、投資家、発行体企業双方にメリットのある情報発信手法を目指し、奮闘中。主な著作に「相場への新たなるアプローチ」(共著)。

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