「経営は生態系」
ニューヨークで訪問した世界最大手の一角をなす年金基金運用機関のファンドマネージャーが「生態系」という金融の世界ではあまり耳慣れない言葉を口にした。配当政策に話が及んだときである。「生態系」とは、自然界のある地域に住むすべての生物群集とそれらを取り巻く環境を一体として見たものである。つまり経営とは、経営者の思想(ビジョン)に基づいて形成された有機体であり、そこから導かれる目標、その結果として実現される利益やその配分は、すべて単体でとらえられるべきものではないということだ。昨今、日本企業においては連結配当性向30%というのがいわば流行のようであるが、適正な利益配分は企業体によって当然異なるものであり、「横並び」への違和感を示すとともに、説明がつけば必ずしも高くある必要はないと語ったのである。
シカゴで面談した投資家は、自らもファンドに出資するまさに資本家である。彼もまた利益配分(キャッシュの使途)に対して成熟したリスクテイカーとして考えを語っていた。例えば、キャッシュにはその1円1円すべてに目的があり、社員に支払うキャッシュ(報酬)は、彼らの幸せのためではなく、生産性向上のためであることを意識すべきである。そして役職員報酬、設備投資、研究開発、買収資金など成長のためにシビアに配分されたあとのキャッシュはすべて還元すべきであるという。
両者とも多くの日本企業はいまだ「数合わせ」の数値目標であり、その前提となる思想や成長のための道筋がわかりにくいと語っている。
まさに経営とは、企業を取り囲むステークホルダーや、成長とともにリスクが並存する環境との関係性でとらえるべきもので、その「生態系」を適切に維持することなのだ。
山本章代(アレックス・ネット株式会社 取締役)
海外企業のIRに詳しい。2005年4月~2006年4月まで、宣伝会議発行の「PRIR」誌に「海外企業のアニュアル・レポート解説」を連載。