アクティビストファンドの活発化・三角合併の合法化などを受けて、このところ日本では、以前にも増して企業買収やヘッジファンドへの警戒が高まっているが、NIRI(全米IR協会)発行のIRアップデート2007年8月号において米国企業のIR担当者がヘッジファンドをいかに無用に恐れているかを示す特集記事が掲載されていたのでご紹介しようと思う。
ヘッジファンドのターゲット
(ヘッジファンド試算より)株価が割安。
低いPBR。
技術系会社ではない。(R&D支出が大きいため)
テイクオーバーディフェンスに積極的。
CEOの給与が同規模の企業より高め。
資本規模で上位20%に入らない。
機関投資家保有比率およびアナリストカバレッジが高い。
ヘッジファンドの実態(Duke大学Alon Brav金融学准教授らの研究より抜粋)
解体屋との違い:少数保有(10%前後)のもとカイゼンによる収益志向。
敵対的行動:全体の26%。
株価収益率への影響:平均7%上昇し、その後も水準維持。
企業売却・買収の成功率:第三者への売却は47%、買収は37%成功。
株式保有期間:約1年間
これらの特長を踏まえ、実際のIR担当者が取るべき対応を以下の通り列挙している。
敵を知るべし。戦略IR・コミュニケーションコンサルティング会社の創業社長であるLuthCommunications LLCのJeff LuthによるとIR担当者は、経営者に対しヘッジファンドにつき理解を促すことであるという。すなわち日頃から彼らの投資スタイル・平均保有期間・自社にとっての重要な事実を知らせておくことである。
冷静に接するべし。ForeSight ConsultingのIRコンサルタントDustin Weeksは「CEO、CFO等実際にヘッジファンドが接触してきた場合スポークスマンになる立場の役職者には、『普通にしている』ように伝えておくように」と言っている。すなわち「仮に相手の態度が攻撃的であっても、通常同様にプロとしての冷静な態度で求められた情報を提示するように」ということである。更に「自社の戦略や経営計画が投資家の納得を得られる合理的なものだと確信があれば、『今後の計画やその背景および実行の意思』という点を強調するとよい。」とも付け加えている。
四半期カンファレンスコールをだれが聞いていたのかを知っておくべし。
ヘッジファンドを十把一絡げに捉えるべからず。ヘッジファンドには乗っ取りを企てたり、利益獲得のため企業価値を毀損しようとしたりなどでIR担当者や経営陣に会いたがらないものもいれば、長期保有の視点から改善計画を提示し、金融コミュニティから尊敬されているものもいることに注意が必要。
時間をうまく使うべし。1対1のミーティングを持つ時間がとれず、長期保有が期待できないファンドがミーティングを求めた場合、数社と一度に会えばよい。ただしアカデミックな調査により明らかにされているように『アクティビストヘッジファンドは超短期志向ではない』ということは念頭におくべきである。
以上のレポートを見ると読者は何ら特別な対応がないと不安に思われるかも知れない。本稿の目的は正にそこにある。しっかりとした経営・透明性の高い開示活動・落ち着いた対応、すなわち本来のしっかりしたIR活動がヘッジファンドへの最良の対処策であるということである。
Hiroshi(アレックス・ネット株式会社 IRプロデューサー)
戦略系コンサルタントの経験を活かし、分析を踏まえた独自の視点からステークホルダーとのコミュニケーションを支援。