IRのコンサルを始めて一年がたった。その間に、議決権行使プログラムの遂行・株主総会運営サポート、株式公開前IRコンサル等を経験させてもらったが、IRに携わる者として金商法(旧証取法)・会社法・経済・財務会計等、知っておくべき内容の幅広さに驚いた。IR担当者の過去の職歴は、企画が39.5%と最も多く、続いて経理・財務(36.1%)、営業(35.5%)、広報(24.7%)、総務(21.2%)*との調査があり、多くの方は常に勉強中という場合も多いのではないのだろうか。このブログにおいては、新人IR担当者や、新社会人などを対象とし、財務会計のテーマから、財務分析、証券分析、経済、会社法等と幅広く思ったことを記載しようと思う。
さて、今回は財務会計のテーマからはじめようと思うが、そもそもなぜ財務会計(簿記)が存在するのだろうか。それは一般的に、利害関係者(株主や債権者・国やアナリスト等)に対し、企業の財政状態や経営成績を明らかにする事であると言える。財務会計は、株主にとって投資した資金が効率よく使われているのか、債権者にとって債権の回収が図れるのか、国にとって適正な課税を行うため、アナリストにとって企業の収益性や成長性を確認するための重要なツールとなる。例えば、個人で言えば素性の分からない者に対して金銭の貸し借りは行わないのと同様に、企業においても、取引を円滑に行うため財務会計は重要な位置づけになるのである(上場すればなおさら)。
ちなみに、簿記というのは複式簿記が採用されており、取引を記載する際には必ず貸借(右と左)が一致するようになっている。簿記の記録においては、全ての項目が、資産・負債・純資産・収益・費用に区分され、資産・負債・純資産は貸借対照表として、収益・費用は損益計算書でそれぞれがまとめて表示されることになる。
又、企業は利益を得るため事業活動を行うため、その過程において様々な事柄が生じる。クライアントと取引を行ったり、新規投資を行ったりである。しかし簿記においては、その取引(事象)の全てを記載するのではなく“簿記上の取引”だけを記載する。いわゆる記帳のルールでもあるのだが、“簿記上の取引”とは、企業の資産・負債・純資産が増減変化する事柄を言う。一般の取引との相違としては、下記の3通り存在する。
①一般でも簿記上でも取引になるもの
②一般には取引というが、簿記上の取引にならないもの
③一般に取引といわないが、簿記上の取引になるもの
上記の①は、商品の売買や諸費用の支払などがある。これらは、一般の取引になるが、企業の資産・負債・純資産が増減変化するため(商品を買えばその分現金が流出する)簿記上の取引にも該当することになる。②は、契約や口約束を言う。例えば建物や土地を借りる契約を結ぶ、仕入先に商品を電話で注文する等であり、これらの事象は資産・負債・純資産が増減変化しないため簿記上の取引に該当しない。③は、盗難や災害による損失等を言う。これらは一般の取引とは言わないと思うが、企業の資産・負債・純資産が増減変化するため、簿記上の取引となる。
一見複雑だが、慣れてくるとこれが直感で理解できるようになるものである。ある大手企業では、新入社員に簿記の研修を行っているようだ。企業を見る目の基礎を養うことができるので、是非これを機会にちょっとでも理解してもらえれば幸いである。終わりに、いくつかクイズ形式で問題を記載するので、確認の意味でも復習していただければと思う。
*日本IR協議会調べ
Q:下記の(1)~(5)のうち、簿記上の取引になるかどうか、検討してください。
(1) クライアントに対し、1ヵ月後に資金を貸与する口約束をした。
(2) 地震により、社長室にあった高級絵画が破損した。
(3) 金庫に100万円を入れていたが、久しぶりに確認をしたら90万円しかなかった。
(4) 従業員を年収500万円の給料で雇い入れた。
(5) 従業員の日ごろの労をねぎらい、年末に社員旅行に行った。
今野 祐希
会計・税務の目線でIRを斬る税理士の卵。趣味はツーリングとサーフィン。