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2007年11月 アーカイブ

2007年11月10日

「経営権のオークション」:経営者はこの緊張感に耐えられるか?

今更ではあるが、上場の意味を考えるこの頃である。先日、M&A関係のセミナーで、「上場とは経営権をオークションに出すことである」と、外資ファンドへの警戒感を強める日本企業に対しての苦言を呈する講師の言葉を耳にした。上場という大舞台に上がった時点から、経営者はさまざまなオーディエンスの「値踏み対象」となることをあらためて意識させる印象的なフレーズであり、まさに「言い得て妙」であった。経営者は常に「経営権」をめぐり、マーケットと対峙する緊張感が必要であるというメッセージである。

かつて小泉首相は参院選での民主党の圧勝に対し、「民主党はこの勝利に耐えられるか」との「名言」を残した。勝利に耐えうる資質が備わっているかということだ。東証の「上場制度総合整備プログラム」は、まさに上場適格性を厳しく問う内容であり、時代遅れの上場制度に助けられて上場を維持してきた企業は、「退出」せざるを得ない状況となってきた。最近のMBO企業の中にもかなりの「退出組」が含まれているが、もうそろそろ限界という「予備軍」もかなり存在しているように思う。

東証は、今年7月に整備プログラムの具体的指針として、流動性基準の大幅な見直を打ち出している。投資家保護の観点から、不特定多数の投資家が、まとまった単位の株式を容易に購入・売却できず、十分な流動性が期待できなくなった銘柄については上場廃止となる。新たに導入される基準の一つは、上場株式数から非流動分の株式数(役員所有分+10%以上所有株主所有分+自己株式)を引いた『流通株式数』基準であるが、これによって投資家は売買とモノ申す機会が増え、経営者や上場という「舞台」はますます「活気付く」ことになろう。

資本政策を策定するにあたっては上場前が肝心という。しかし「経営権の確保」や「上場利益の実現」など様々な観点から株式の所有割合を決めたとしても、一度上場してしまったら、経営者と投資家が同じ土俵で経営権と利益を追求することになる。経営者はこの緊張感に耐えられるか。

東京証券取引所「上場制度総合整備プログラム」:http://www.tse.or.jp/rules/seibi/index.html


山本章代(アレックス・ネット株式会社 取締役)
海外企業のIRに詳しい。宣伝会議発行の「PRIR」誌に「海外企業のアニュアル・レポート解説」を連載(2005年4月~2006年4月)。

2007年11月19日

外国人の動向 (新興市場編)

前回、外国人の日本株売買状況について記載したが、今回はさらに絞り込んで新興市場における外国人の売買状況・株式保有状況について記載したい。

まずは、その前に前回8月末までに6兆円以上の買い越しとなっていた外国人の日本株売買状況だが、その後10月末までの状況としては、9月4944億円の売り越し、10月5041億円の買い越しとなり、累計差し引き状況は8月末の時点の状況と大きな変化はない。2007年も残すところ2か月だが、外国人の買い越し状況および保有比率トップは昨年に引き続き継続する公算が高い。特に保有比率については、これまでの買い越し状況や他の投資部門で目立った買い越しが見られないことから30%を超える水準も見えてきている(昨年は28%)。

さて、では本題の新興市場における外国人の日本株売買状況はどのようになっているのか。参考になるデータは今年から東証が集計を始めた東証マザーズ株式売買状況ぐらいしか今のところ私は知らない。従ってこのデータを参照すると、やはり日本株全体の売買動向と同様に外国人の買い越し状況が際立っている。
東証マザーズ投資部門別売買差し引き金額

東証マザーズにおいても外国人投資家は約1000億円の買い越しとなっており、他の投資部門がほぼ売り越している中、一人気を吐いている状態だ。特にかつての新興市場の盛り上げ役であった個人投資家離れが顕著となり、個人投資家が大幅売り越しとなっている中では貴重な買い手と言える。

では個別に新興市場株の海外機関投資家保有状況はどのようになっているか?

ここで独自に調査した資料をご紹介したい。当社では新興市場で四季報データから外国人保有株比率が1%以上の銘柄のうち556社について調査したところ、実際に保有している海外投資家を特定できた企業は298社であった。本来はすべて確認できてもおかしくないはずだが、ヘッジファンドなど保有事実を明らかにしたくない投資家は届け出をしないケースも多く、6割弱の確認しかできないのであろう。その中で最多の保有投資家数が確認されたのが楽天で105の海外投資機関に保有されている。以下20位までをランキング表にしておくのでご参照いただきたい。
新興市場の保有海外投資家数上位20社

当社でも海外投資家の保有株状況を把握できるサービスを取り扱っているが、現在このようなデータを入手することが比較的容易にできるようになっている。

新興市場の企業の中には、「IR活動の対象は個人投資家」と決めてかかっているような企業もあるようだが、実際には個人投資家は大幅に売り越しており、実際の買い手が外国人投資家であることが見過ごされているように思われる。株価低迷を課題に置かれている新興企業のIRご担当は一度これまでの常識をフラットにして、課題に対して有効なIR活動を行うには誰にどのような活動を行うべきかを今一度再考されてみてはいかがであろうか。


宮部 明郎
大手証券会社、トムソンコーポレーション、FISCO、IFISjapanを経て、2007年より当社に参画。
投資情報とIR情報は表裏一体の関係であり、投資家、発行体企業双方にメリットのある情報発信手法を目指し、奮闘中。主な著作に「相場への新たなるアプローチ」(共著)。

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