Q:近年CSR(企業の社会的責任)が投資家の投資判断の際に重要な決定要因になってきているとよく聞くようになりましたが本当ですか。
このようなIR担当者からの質問がNIRIに数多く寄せられるほど米国ではメディアを中心に重要課題として取り上げられIRでも注目を浴びているCSRだが、実態はどうなのだろうかという記事を今回の注目記事としてご紹介したい。
調査会社であるRivel社の調査によると投資家が投資判断においてCSRを重視する(唯一の)ケースは、ある企業が自社の事業活動により社会環境への悪影響を抑えられる上に当該企業が明確にその地域・領域での悪影響の原因であると特定される場合であるという。
調査対象である全米243人のポートフォリオマネージャーが投資判断の際に重視する項目としてあげたランキングでは、経営陣の信頼性(77%)・有効な事業戦略(74%)・一株あたり利益の成長性(69%)などの上位項目に対し、CSRは10項目の選択肢中で最低の4%に過ぎなかった。
事業分野別に見た場合でもバイサイドは、CSRを10項目の最下位に位置づけており、最も重視するセクターでも12%に過ぎなかった。伝統的にCSRが重要な課題と言われる化学や採掘などの素材産業が最も多くの投資家が重視すると答えたセクターだったが、その場合でも投資家は環境影響などをリスクとして認識して投資しておりバリュエーションの際にディスカウントをかけているレベルで気にしているに過ぎない。
CSRの意義は企業の本質的価値への信頼を支え、マネジメントの信頼性を脅かす脅威に対し防波堤となることであるという。CSR戦略自体は単独で最優先事項としてアピール材料にはならないものの、IR担当者はプロの投資家が期待するような答えを即座に自信をもって答えられるように精通しておくことが必須のトピックであるわけだ。
翻って日本では、相次ぐ食品偽装に見られる消費者を始めとするステークホルダーへの背信行為とその影響を受けた株価の大幅な下落がCSRをめぐる問題として記憶に新しい。今後日本企業のCSRについて海外機関投資家がバリュエーションを行う際にはディスカウントの算定根拠としてこの問題が影響することは容易に想像できる。
今回の調査結果を受けて自社のCSR対応の遅れが大きな問題ではないと安堵したIR担当者はまさかいないとは思うが、危機管理時代の経営・IRであることには何ら変わりがないばかりか日米ともに重要性は今後さらに増していくと考えるべきであろう。
Hiroshi(アレックス・ネット株式会社 IRプロデューサー)
戦略系コンサルタントの経験を活かし、分析を踏まえた独自の視点からステークホルダーとのコミュニケーションを支援。