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2005年11月 アーカイブ

2005年11月04日

新会社法で第3の起業期を迎えるか

来年5月頃、新会社法が施行されます。こんどの会社法にはいろいろな特徴がありますが、大きな特徴の一つに設立時の出資額の規制の撤廃があります。

 明治以降、3つの大きな起業期があるそうです。第一は明治期だそうです。江戸幕府が倒れ明治の新体制に移行しました。この時、士農工商も崩壊し、これまでの存在基盤であった幕府・藩がなくなったため武士が失業し、 その武士が起した起業が「武士の商法」と揶揄されるものです。第2の起業期は1945年の終戦後だそうです。敗戦で軍人が外地より引き上げてきて商売を始めました。この新商法の施行が第3の起業期の引き金になるというのです。
 
 これまでは、株式会社を設立するには設立時に1,000万円の資金が必要でした。有限会社の設立には300万円が必要です。この規制がなくなりますので会社が作りやすくなるのです。折角よいアイデアやビジネスモデルを持っていても資金の問題で会社が設立できないという制約はなくなります。会社勤めをしてもリストラで職を失う可能性があるなら、自分で会社を興しうまく行けば第二のマイクロソフトになる可能性に賭けるという若者もでてきます。起業者が多くなれば、そのなかなら新興市場に上場する企業も多くでてきます。確かに起業しその会社を大きくするのは大変ですが、上場という楽しみは何にも代えがたいものでしょう。今度の新会社法で日本経済の活性化を大きく後押しするかもしれません。

起業の成功の条件

 これまで振り返ってみると、起業して成功するには次のような条件に恵まれなければならないと実感しています。
 
 まず第1の条件は供給する財・サービスが時代の流れに乗っているかどうかということです。これからの時代が求めるサービス、財を供給しなければ会社は伸びません。パイが縮小するなかで利益の増大を図るのは非常に難しいのです。(このときに実力がでます。)反対にマーケットが拡大する中で利益を伸ばすにはそれほど難しくはありません。ですから成功するためにはこれからの時代の流れに合致したビジネスモデル、技術、商品を持っている必要があります。ただし、早すぎてもいけません。タイミングが大切なのです。

 第2の条件は、これまで培ってきたノウハウ、経験、知識を生かせるものでなければならないということです。これまでの世界とまったく異質な世界のことをやろうとしても土地勘がありませんから、エネルギーと金と時間のロスになるのです。

 第3の条件はよき友人、参加者に恵まれることです。一人でなにもかもやろうとしても無理です。スーパーマンではありません。限界があります。そこで志を同じくする人が集まって適材適所で活躍する必要があります。よき経営者、よき営業マン、キャッシュフローを見る経理マンの少なくとも3人は必要でしょう。

 以上の3つを要約すれば言い古された「天の時、地の利、人の和」です。

 しかし、最も必要なのは経営者の自分の仕事に対する想い入れ、熱き想いでしょう。ベンチャー企業発掘のプロは、ベンチャー企業の評価は経営者がすべてといいます。高邁な理想と熱き心を持つ経営者が必要条件ということになのです。

2005年11月10日

最近の決算発表をみて

 最近の決算発表をみて感じたことがありますので今回はそれを書いてみました。決算発表自体には大きな変化はありませんが、最近目につくことがあります。まず、第一は決算説明会を行なう企業の数が増えているということです。従来は決算短信を配信するだけでことたりるという企業が多いようでしたが、これでは企業の現状、将来を正確に投資家に把握してもらうには不十分との認識が広まってきたためと思われます。第二の特徴として決算発表から決算説明会までの期間が短くなったことがあげられます。これも正確でホットな経営情報をすばやく投資家に伝えたいという表れでなのでしょう。
 
目につく第3のポイントは、説明会で配布する資料を日本語と英語の両方の表記にしているところが増えているということです。この日米両表記の資料は外資系で働くアナリスト、ファンドマネージャーにとって大いに役立ちます。日本語で配布付される資料をいちいち翻訳して本国に送る必要がないからです。そのままFAXすれば大体のことはわかります。翻訳の作業は大変です。時間に迫られている上に正確な翻訳でなければなりません。この作業から解放されるメリットは非常に大きいのです。日米両表記の資料は投資家の身になって作られているというカスタマー・サティスファクションの面からの時間と経費の節約以上に投資家の企業イメージの向上に役立つと思います。

2005年11月11日

株価は企業の通信簿か

 最近の傾向として企業サイドから時価総額を高めたいという要求がでてきます。株式交換によるM&Aでは高株価の企業の方が低株価の企業より有利に作用するためもあることと思います。
 
 そこで、今回は「株価は企業価値を正確に表しているか」ということを考えてみたいと思います。昔、企業の長期的なチャートを作ったことがあります。20年間の株価と一株当りの利益、配当金の推移をシンプルに表したものです。株価は短期的には大きく変動しますが、結局は一株当りの利益に大きく連動していることが一目瞭然なのです。まさに「見えざる手」によって動いていることがわかります。株価の予知能力には驚かされます。
 
 株価は時々刻々投資家が企業を評価した結果なのです。超目先の評価が積み重なって、その連続がチャートになります。この刻々の評価は未来予測の手法の一つであるデルファイ法と同一なのです。デルファイ法では専門家にアンケート調査をします。その結果を集計し再度専門家に教え、その結果について再びアンケート調査をします。それをまた集計し、専門家に配布しアンケート調査を実施します。この行為を繰り返し行い、結果が収斂するまで繰り返すのです。株価の場合もこれと同じです。投資家が株価と将来性をみて高い、安いの判断をします。その結果をさらに投資家が検証して新たな株価が生まれます。この繰り返しが株価です。
 
 デルファイ法の有用性ですが、例としてアメリカがソ連の原爆の保有数を推測した例をあげます。昭和20年代後半、「鉄のカーテン」の向こう側であるソ連でアメリカに追いつき追い越せというわけで原爆がつくられました。その際、ソ連がどのくらいの原爆を持っているかアメリカが調査しました。数々の資料を専門家に渡し、ソ連が何発原爆をもっているかアンケート調査をしたのです。その結果を回収し再度専門家に配布しました。これを繰り返したのです。答えは徐々にある数に収斂してきました。あとでスパイから入手したのでしょう、正確な数字がわかったそうですが、調査結果と大きく違わなかったそうです。かなり確度の高い予測法といえるのではないでしょうか。
 
 ですから、株価はある程度正しく企業の実態を反映しているといえそうなのです。ただし、ある時期では大きく間違えるのですが・・・。

2005年11月17日

会社の印象は担当者の印象

 アナリストやファンドマネージャーが企業訪問を行うと、当然のことながらIRの担当者、経理担当者に会って業績はどうなるのかということに話は集中します。
 
 その際、会ったIRの担当者、経理担当者の印象がその企業の印象になるという、いたって人間的な、エモーショナルな評価が行われるのです。昔、外国人投資家を連れてある企業に訪問したときのことです。一流企業なのですが、IR担当者は不慣れだったせいもあったのでしょうか、情報開示はいまいちでした。質問には的確に答えられないどころか全く関係ないことをいうのです。減価償却費はアナリストの関心事ですから、必ず質問が出るはずです。ところが今期の減価償却費と来期の減価償却費を教えて欲しいとの質問には、全く答えず関係ない数字をいうのです。2度、同じ質問をしても答えを得ることはできませんでした。当然、その投資家の会社に対する評価は低くなります。その投資家から買い注文は入らなかったはずです。ここで言いたいことはいかによい会社であっても担当者がつまらないミスを犯してしまうと企業価値を高めるどころか、かえって低める結果になるということなのです。
 
 反対の例をあげます。ある鉄鋼会社の決算説明会には多くのアナリストやファンドマネージャーが集まりました。(担当を離れてしまったので現在はどうかわかりません。)その説明会にでれば、業界の現状、問題点、市況の推移、生産量等についての見通しやコメントが得られたからですが、自社にとっての悪材料も包み隠さず話すという担当役員の姿勢、つまり会社の姿勢も同時に高く評価されていました。
 
 アナリストやファンドマネージャーの要求になんでも応える必要はありませんし、できないものはできないのです。アナリストやファンドマネージャーにおもねるというわけではなく、できる範囲で誠意をもって対応することが大切なのです。担当者が誠意をもって対応すればそれが会社の評価に結びつくのです。

ファンドマネージャー、アナリストが評価する説明会とは

 アナリストやファンドマネージャーが決算説明会や会社説明会に出席するにはいろいろな理由があります。トップの経営陣の考え方、経営方針を再確認し、その企業を取り巻く問題点があるとすればどのような問題点か、その問題点に対してどのような対策を講じているかを知りたいのです。そして最大の関心事である企業業績はいつターニングポイントを迎えるのか、つまり、いつ天井をつけるか、または、いつボトムアウトをするかといったことの手がかりを得るためです。これらのことを知りたいという欲求は顧客の資金を預かって運用する以上、当然のことなのです。
 
 ですからこれらの関心事に応えていない決算説明会や会社説明会はアナリストやファンドマネージャーにとって時間の無駄ですから、足が遠のくのは当然のことなのです。
 
 企業業績のターニングポイントを掴むことが最大の関心事であると述べましたが、経営陣の経営哲学も重要なのです。その際、その自ら信じることを自分の言葉で述べることが大切です。気分の言葉で信念を述べることが、共感を呼ぶのです。決して美辞麗句を並べる必要はありません。経験と信念に裏打ちされた自分の言葉で述べることが評価されるのです。
 
 その他、必要なものは具体的な数字でしょう。抽象的な表現でなく具体的な数字で示すことが大切なのです。どのようなことが起こっているかを端的に示すものが数字だからです。数字は万国共通です。数字を出せばどこの投資家にもわかってくれますし、説得力がでるのです。
 
 ですから、アナリストやファンドマネージャーに評価される説明会とは意外と簡単なのかもしれません。以上を行えば、評価される説明会になるからです。

2005年11月25日

投資判断としてのキャッシュフロー

 証券投資をするにあたって、まず、第一にしなければならないことがあります。それは投資しようと思っている企業の価値がどうなのか、その企業が株価に比べて割安なのか、割高なのかを判断しなければならないということです。株価の判断基準にも利回り、PER,PBRといろいろありますし、投資家の運用方針によって投資期間も違います。短期運用に徹する投資家もいますし、長期運用を行う投資家もおり、それぞれ使う投資尺度もまちまちです。
 
 私が、運用の際に使っていたのが一株当りのキャッシュフローでした。当時、私が所属した機関では優良株の長期投資を信条としていたので、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)をメインに投資判断を行っていました。多分、大きな運用機関で行われている方法ではないかと思います。利益は会計処理の違い、特に償却方法の違いによって差ができますが、キャッシュフローには差がでにくいといった理由からキャッシュフローに着目するのです。この場合、将来、3−5年分のキャッシュフローを計算するのですが、いたって簡便な方法をとります。営業活動からのキャッシュフローを計算する場合、売掛金や棚卸資産、支払手形の増減分を考えなければなりませんが、一切そのようなことは考えず、予想税引き利益にその期の減価償却費を足して算出するという至ってラフな方法です。ラフな方法ですが、この業績予想の基礎となる利益予想や減価償却費の予想のために、企業に出向いてヒアリング調査を行う必要があったのです。
 
 集めたデータから業績予想と一株当りキャッシュフローを算出し、一株当りのキャッシュフローの増加が見込まれ、PCFRが低くなると長期投資の対象として投資を行うという、いたってシンプルな投資を行っていましたが、その効果には絶大なものがありました。企業価値は企業が自由に使えるフリーキャッシュフロー(FCF)の動向によるといわれますが、キャッシュフローの予想は、企業価値の測定、投資判断に有効なのです。

資本コストの計算でのβについて

フリーキャッシュフロー(FCF)を使って企業価値の算出する場合、手順として各期のFCFを計算します。次に資本コストを計算しなければなりませんが、この資本コストを計算するにあたって負債コストと株主資本コストを計算する必要があります。

この株主資本コストは、上場会社の場合、資本資産評価モデル(CAPM)を使い計算します。この株式資本コストは次の式で求めます。

株式資本コスト=国債の金利+βx(株式市場のプレミアム)

βは個別銘柄の株式市場に対する感応度です。1以上の場合はマーケットの変動以上に動き、1未満の場合はマーケットの変動より少ない動きということになります。マイナスの場合はマーケットと逆に動くことになります。

 βは係数ですが、一定なのでしょうか。例えば、マーケットの柱になって活躍している場合、その企業のβは1以上でしょう。ただ、マーケットのセンチメントが急変し今までマーケットを引っ張っていた株が人気の圏外になるということがあります。その場合、βは1未満になります。この人気のローテーションは格言にあるように大回り3年といわれます。ですから時期によってβは大きく変わるものと考えられます。
 
 また、y=α+βxという関係式ですが、マーケットの動きと個別銘柄の動きとの関係を見てみると団子のような状態になっておりはっきりとわかるほど直線上には乗っていないのです。相関係数がどのくらいかわかりませんが、マーケットの動きと個別銘柄の動きをプロットしてみると、きれいな関係があるとはなかなか思えません。βの値自体にかなり幅があるのではないかと思っています。
 
 以上、思いつくままにβについて書いてみましたが、ほかに代替するものがない以上、仕方がないのかもしれません。

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