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2006年02月 アーカイブ

2006年02月03日

決算短信の英訳

 外国人投資家の投資の一助になるように決算短信を英訳する企業が増えています。投資家に地域・言語に格差のない投資情報を伝えることは大切なことです。日本人の投資家にばかり顔が向いてそのための投資情報を発信するのは今の時代にあっては時代錯誤の感を免れません。公正な株価形成のためにはいろいろな価値基準をもった投資家が参入していなければなりません。国際化の時代なのですから、各国のいろいろな投資家の判断を仰いで公正な株価を形成する必要があります。そのためには決算短信の英訳は是非必要です。
ただ100%日本語を正確に翻訳するだけでよいのだろうかいう問題がでてきます。先方のニーズと違うのではないかという可能性です。ある面で過剰スペックとなり、ある面では不足であったりする事は十分考えられますが、具体的にどの程度の情報ならば先方が満足するかということです。
外国人投資家、又は、外資系のファンドで働く日本人ファンドマネージャーは、投資資料を作成して本国に送らなければなりません。
そこで相手の立場で考えてみましょう。相手は外国人投資家、又は、外資系のファンドで働く日本人ファンドマネージャーですが、そのレポートを手にするのは本国の投資家です。そこで、どこまで開示した情報ならば必要十分なのかは判断が難しいかと思います。投資家の要求には限りがないからです。ただ、基本は必要十分で簡潔なことではないかと思います。
そこでちょっと考えて見ました。投資の先進国であるアメリカに例を求めればよいのではないかと。アメリカ企業の決算短信と同じような形式・内容ならば、必要十分でかつ簡潔な情報として満足がゆくかもしれません。(日本の決算短信では不満だというわけではありません。)
まだ、具体的に日本の短信と詳細な比較をしたわけではありませんが、アメリカの決算短信やForm10-Qと比較すれば、何かおもしろい結果がでるかもしれません。

健全な赤字部門

 19世紀のイタリアの経済学者であり社会学者のパレートの有名な法則に20:80の法則があります。この法則を「パレートの法則」といいます。これは投入の20%の部分が成果の80%を占めるという経験法則です。
 具体的な例としてこのパレートの法則のあげてみましょう。よくいわれる例として仕事の成果の80%は費やした時間の20%から生まれ、売上の80%は20%の製品から生まれるとなどがあります。
 それでは20%の努力(=時間)が仕事の成果(=売上)の80%を占めるとすると残りの80%の努力は費用対効果を考えると効率的とはいえません。ですから、乱暴な言い方をすれば、この80%部分をアウトソーシング(外部委託)すれば費用も安く済みますし、経営資源をこの20%の製品に集中したほうが、一層経営効率が向上するということになります。
 しかし、経営資源をこの儲かる部分にのみ集中させてよいのだろうかという問題がでてきます。およそ30年前、アメリカの大学院で経営改善策の一つとして儲かっている分野のみに経営資源を集中するということの是非を論じる授業がありました。儲かっている分野ばかりに経営資源を集中すれば目先の業績が上がりますが、次の成長ステップの布石、つまり次代の成長商品の開発がおろそかになります。現在、販売が好調な製品でも時がたてば成熟した製品になり次第に売上が伸びなくなります。そのため当然のこととして目先は赤字でも将来の利益の源泉となる製品の開発が長期的な事業戦略として必要となります。いつまでも赤字を垂れ流す不健全な赤字部門は早急に整理しなければなりませんが、企業には必要なのは現在赤字でも将来利益を生む、「健全な赤字部門」なのです。
 当然のことながらアナリストや投資家は、この「健全な赤字」を次の成長のために必要なステップとして大きく評価します。特にこれまでの業態と大きく異なる企業に変身する可能性が大きければ、その企業は生まれ変わるという思惑が働き時価総額は急増します。株式市場は、企業の“夢=可能性”を求めるのです。ですからこの“夢”のない企業は、万年割安として評価されないのともいえます。うちの株価は万年割安だと思いの方は、このことを考える必要があります。今回は「パレートの法則」から思わぬ方向に来ってしまいました。

2006年02月17日

株価の増幅

 株価は、企業の将来性をみる有力な判断材料の一つです。かなりの先見性があることは、投資の実務に携わった人ならば周知の事実といってもよいでしょう。私の例ですが、90年代後半にある経済研究所で働いていました。山一證券や三洋証券の破綻が市場を暗いムードにしていました。ちょうどその頃、研究所の調査マンの前で話した覚えがあります。「株式市場の下げをみると、日本経済に大変なことが起こるといっている。今に働けるだけで幸せだという不況が来る。」といった趣旨のことを話しました。鳥肌ができるような下げだったので感じたままを述べたのです。その後のリストラ、デフレ問題をみればその通りになりました。
 株価には先見性があることはある程度納得されると思いますが、すべて株価が正しいのかというとそうでもないのです。大底や天井では人間の心理が株価を増幅するからです。株価が上昇すればするほど、人は強気になります。もっと買って儲けようという「欲と二人連れ」で正常な判断ができなくなります。下げ相場では株式を持っているのが怖くなります。底値圏では底なしに株価が下がるような錯覚に陥り値段にかまわず売却するからです。ですから天井圏や底値圏ではこのような心理状態が株価を増幅するので、株価の行き過ぎがでてきます。
 企業では、企業価値を高めることが時価総額を増大させることとイコールであり、株価の上昇は歓迎されます。しかし、このような人間心理による株価の増幅を考えると、天井圏や底値圏での株価は異常事態と考え、正常な状態、つまり正常な心理状態での株価を企業価値の尺度とする必要があります。
  どこからどこまでが正常な状態での株価形成かという問題があります。天井圏ではオーバーヒート(過熱)した極端な状況、底値圏では極端な弱気が市場のコンセンサスになっている状態を除いた部分ということしかいえません。

2006年02月20日

最近の株価形成

 株価のことを書きましたので、最近、マーケットを見ていて気になることを書きます。アナリストがレポートに目標株価を明示する場合がありますが、するとすぐに目標株価の近くまで株価が上昇してしまうということが最近よく起こります。
 なぜこのようなことが起こるのでしょうか。まず、考えられることは投資家が、自分で物事を考えないで、安直に株式投資で儲けようという下心があると思います。特に個人投資家の場合、この傾向が顕著ではないかと思っています。証券投資の経験が少ないため、何をいつ買ったらよいかわからないが、儲けたいという安直な意識が働いているのでしょう。専門家であるアナリストが進めるもので目標株価が書いてあれば、取りあえずその手前まで上昇するであろうといった思惑があると思います。
 ここで、注意したいのは、証券投資で儲けるのはそんなに簡単なことではないということです。常に経済なり企業分析なりの勉強が必要なのはいうまでもありません。投資環境は時々刻々変化します。周りの状況を考え今、投資してもよいか考えなければなりません。投資対象を具体的に選ぶ場合は、さらに大変です。アナリストレポートには現状はどうなのかという現状分析とともに、業績予想の前提となる条件がいろいろ書いてありますから、そのレポートに書いてある条件を吟味して自分なりの判断を下す必要があります。当然のことですが、前提条件が崩れる可能性も考えなければなりませんし、同業他社の反応や動向も考えなければなりません。どこまでこの材料が織り込まれているかも考慮しなければなりません。
 このようなプロセスを省いてレポートを鵜呑みにして投資を行うのですから、株式投資は簡単と錯覚してしまいます。(注文がだせれば、証券投資をマスターしたと考えているかもわかりません。)ですからレポートがでると株価は素直に反応し値動きも荒くなります。レポートでは2−3年先の利益としていますが、株価はすぐに織り込んでしまうといった事態も起こりかねません。
 このような荒いマーケットでは、株価も乱高下します。当然のことながら全員が儲かるわけではありません。損をする投資家もでてくるはずです。株式投資は自己責任で行わなければなりませんが、損をするとレポートを書いた証券会社が悪いとか、買った株が下がったのに、経営者は何をやっているのかといった場違いな批判をする投資家もでてくると思います。
 公正な株価の形成にはいろいろな判断基準をもつ投資家が、数多く市場に参入することが必要不可欠です。ですが、同じような投資家が多くなれば、同じような行動パターンになり株価の変動も大きくなり、公正な株価形成に歪みが出てくる可能性があります。

2006年02月25日

企業にとって最適なIR活動とは

 企業に関して投資家の理解を深めてもらいその価値を正当に評価してもらうことがIRの目的でしょう。
 ただ、正当に評価してもらうためにいろいろな手段があります。投資家といっても国内の機関投資家、個人投資家がいますし、海外には外国人投資家がいます。短期投資を目的にする投資家もいますし、長期投資に徹する機関投資家もいます。ですから、誰を対象にしてIR活動をするのかによって、その手段の当然のことながら異なります。その手段の組み合わせがノウハウでIRコンサルの業務はこのノウハウの蓄積の上に成り立っています。
 以前、企業年金のコンサルをやっていました。そのときも同じような経験をしました。企業年金のなかに税制適格退職年金があります。この年金は主に中小企業が入っている年金なのですが、2002(平成14)年以降、税制適格退職年金の新設はできなくなり、2012(平成24)年3月末までに他の年金に移行しなければなりません。そこで中小企業向けに税制適格退職年金のコンサルをしました。ところが業種によって、従業員の年齢構成が異なる上に、企業の成長力、財務内容が異なります。このため、その企業の体力も異なりますし、退職間際の従業員が多い企業があります。ですからある企業にとって最適な年金の組み合わせが、他に企業、従業員にとって最適とは限らないのです。
 同じことがIRコンサルについても言えるのではないでしょうか。ある企業は、割安に放置されているために、投資家の認知が必要と考えていますが、割安に放置されていると経営者が考えているのですが、投資家はそうは思っていなかったり、単にその企業にあった独自の投資尺度を普及させれば問題が解決する場合があるかもしれません。
このように最適なIR活動とは、企業によって異なるのです。ですから、同じように見えても比重の掛け方をかえてそこ企業に最適な「解」を探すことがIRコンサルの真髄といえます。

2006年02月28日

アナリストから見た説明会

 決算説明会や会社説明会は、アナリストにとって重要な、ある意味で得がたい経験ができる場なのです。決算説明会での経営陣による重要事項の説明や配布資料は、会社の状況や将来こうあるべきであるとする計画を端的に述べた資料の価値は大変貴重なものなのです。切れ味鋭く分析、評価し、さらには将来像を提示してくれる資料は、説得力があり何事にも変えがたい価値があります。
 しかし、そればかりではありません。その企業を取り巻く環境の変化、問題点に対してどのように考えているか、いろいろな選択肢のある中でどのような対策を採ろうとしているのか等を、経営陣は自らの言葉で述べますから、経営陣の考え方がよくわかる場でもあるのです。この自らの言葉で業績なり、ビジョンなりを説明するということは、アナリストやファンドマネージャーからすれば願ってもないチャンスなのです。それは企業の根幹である経営陣の評価ができる「場」だからです。このようなしっかりした考えをもつ経営者なら、大丈夫だとか、人材面のバランスから見て環境の変化に十分対応ができるだろうとか、特に創業者の場合は、自己の企業に対する思い入れ、何のために創業したか等の企業のミッションがわかります。
 ですから、この決算説明会や会社説明会は、企業サイドから見ると、投資家への情報提供の場ですか、その情報には、投資のために必要ないろいろな情報が含まれているといえます。
 分析には「定量分析」と「定性分析」があります。数字からの分析が定量分析で、数字に表れない分析が定性分析です。決算説明会や会社説明会は経営者・経営陣の資質を評価するという定性分析の場でもあるのです。

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