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2006年03月 アーカイブ

2006年03月08日

配当性向重視の意味

 本日の日経新聞の一面に「今期配当 倍増相次ぐ」との見出しの記事がありました。この記事の中に次のような文章があります。「・・・積極的な『日本株買い』を進める海外の機関投資家が、余剰資金の使い道に激しい目を向けていることも大幅増益が相次ぐ一因とみられる。・・・」
 株主は、企業があげた利益の一部を配当金として受け取ります。かなり姿勢が変わったとはいえ日本企業の場合、将来に備えて経営基盤を強化することで安定的な配当水準を維持するという企業がまだかなりあると思います。いくら業績が好転しても増配はなく、変わりに経営環境が悪化しても配当金に変動はないという安定配当を第一とする主義です。どのくらいの配当金をもらえるかという表示も以前は額面に対していくらという配当率で表される場合が一般的でしたが、これも安定配当第一主義の現われといえると思います。
 安定配当第一主義は根強く残っているとはいえ、収益力に見合った配当金をだすという考えが一般的になりつつあります。この現われが1年間に稼いだ1株当り利益に対してどのくらいの配当金を支払っているかという配当性向です。企業の配当性向何%をメドに増配を検討するなどの表記をする企業が多くなっています。この配当性向による表示は株主重視の表われであり、徐々に安定配当からの脱却ともいえるのです。
 ここで配当金と企業の成長の関係を考えてみましょう。1年間に企業があげた税引利益から配当金や役員報酬を除いた利益は、企業が将来の成長のために使える資金です。役員報酬を無視して配当金のみが社外に流失すると考えます。ROE(自己資本利益率)とこの企業が将来の成長のために使える資金には次のような関係があります。
 企業が内包する成長率=ROEx(1−配当性向)
この成長率が高い企業では、配当金としてもらうより企業の成長に役立つよう再投資してもらったほうが投資家にとって有利なのです。ですから、配当を低く抑えた安定配当第一主義はある意味高度経済成長期に適した配当政策でもあったわけです。ところが低成長期が恒常化してくると社内留保より増配ということになります。昔どこかで読んだ記憶がありますが、企業の配当政策は株価に影響しないというのが投資理論にありましたが、成熟して成長が望めない企業では、内部留保を厚くするより高い配当金を受け取るほうが投資家によってよいといえます。成長もせず、配当金も僅かであるとすると、その資金を回収してもっと成長する可能性のある企業に投資したほうがキャピタルゲインも期待できるため、資金シフトも起こる可能性があります。成長もせず社内留保ばかり厚くすると割安株は割安株のまま放置されることになりますし、このようなキュッシュ・リッチで低株価の企業はM&Aの対象になりかねません。時代は配当性向重視の時代へと着実に変貌しています。増配して株価を上げることが成熟企業には求められる時代になっているかもしれません。

2006年03月10日

投資価値とIR活動

 投資物件の投資価値とは何でしょうか。株式であったら毎期毎期配当金がはいります。債券ですと利息です。株式であったら毎期毎期手にする配当金を会社は継続しますからずっと永久に配当金を受け取るという前提でその配当金を利子率で割り込んで現在価値を求め合計したものが会社の価値ということになります。債券の場合は毎期毎期もらう利息の現在価値と償還時に受け取る償還金の現在価値の合計ということになります。
 企業が設備投資を行う場合も同様でその設備投資から生じてくるキャッシュフローを割引率で割り込んだものの合計に等しくなります。

P=D1/(1+r)+D2/(1+r)2+D3/(1+r)3+・・・
P:投資物件の価値
Dn:n期の投資物件からのキャシュフロー(株式であれば配当金、債券であれば利息)
r:割引率(=金利)
株式の価格は毎期の配当金を金利で割り込んだ額の合計になります。Dn利益の増加にスライドして増配するとすれば、株価が上昇するには利益が上昇すること、または金利が下がること、もしくはその両方が起こることが必要になります。
 この式ですと企業価値を上げる(=株価を上げる)には、将来の発生する利益なり配当金なりを上げること、金利が下がること、またはその両方が起こることが条件になります。
 すると将来のキャッシュフローを上げさえすればIR活動は必要ないのでしょうか。株式市場では全ての情報が瞬時に投資家に消化されるわけではありません。常に情報ギャップがあります。(瞬時にあらゆる情報がマーケットで消化されるのであれば、つまり効率的ならばアナリストはいりません。会社訪問をしてレポートを作っても既に織り込み済みの材料になっていますから。)株式市場は、それほど効率よくないのです。経済はますます複雑化していきますし、毎年毎年上場会社の数が増えてゆきます。昨日の会社は今日の会社ではないのです。投資家が消化不良を起しても無理はありません。会社の実態、そして将来を投資家に正確に知らしめる必要があります。企業と投資家の橋渡しとしてますますIR活動が重要になってくると思います。

2006年03月16日

余剰資金の活用の時代に

 以前、既に利益成長のない企業、つまり成熟した企業は、次の成長すると目される分野に利益を投資しないのならば、利益を内部留保にまわすより配当金として株主に還元したほうが株主にとってありがたいというようなことを書きました。そのほうが増配で株価も上昇しますし、M&A対策にもなると思います。 
 このような成熟した企業は、キャッシュリッチな企業が多いため、資金を目当てにM&Aのターゲットになりやすい企業でもあるのです。それはM&Aしてその資金をもっと利益の上がる分野に投資すれば企業価値があがりことになるからです。M&Aのターゲットになるよりは積極的に余剰資金を有効活用するほうが長期的にみて投資家の評価も上がりますし、そういう時代に入りつつあると思います。
 日本経済はバブル崩壊の苦境から着実に立ち直っています。これまで金融機関は不良債権の処理に、製造業は3つの過剰(人、負債、設備)に、小売サービス業はデフレに苦しめられてきました。そのため、各社は、人を減らし借入金の返済を通じて財務体質の改善に注力してきました。これらの後ろ向きの処理もほぼ終焉し、バブル崩壊以降の15年にわたる低迷期を脱しつつあるのが日本経済の現状でしょう。当然のことながら景気循環はありますが、これからは大勢でみると経済は長期にわたって潜在成長率で回復する可能性が高いといえます。このような局面を迎えて増配等で守りの姿勢を貫くより、その余剰資金をM&Aの資金に使うなどして次の成長路線の布石とするほうが企業の評価も高まりますし、その時期に来ていると思います。

2006年03月17日

デフレからの脱却

 1990年代後半から日本経済はデフレ圧力に悩まされてきましたが、やっとデフレからの脱却し、本来の姿に戻る過程にあります。これまでデフレ経済経済が長期化した原因は2つあると思います。第一が世界的な供給過剰です。第二の原因が日本のバブル経済の崩壊による景気の低迷です。
 第一の原因である世界的な供給過剰ですが、1989年の「ベルリンの壁」の崩壊で共産圏が瓦解し東欧諸国が新たな生産基地になったこと、中国に各国が進出し世界の工場となったことで供給余力ができたことによるものです。生産工場はすぐにできますから供給は即座に増えますが、それに見合う需要は直ぐには増えなかったのです。ですからこの世界的な需給ギャップが生じたことによるデフレです。
 第二の原因が日本固有の要因です。バブル経済の崩壊から日本経済が不況に陥り、価格を下げなければ売れないという状況に陥ったことによります。
 これまでデフレというものは経済学の教科書でありませんでした。ほとんどの場合がインフレの歴史といえます。そのデフレを体験できたということが稀有なできごとなのです。ここでデフレとインフレとどちらが悪性かを考えてみましょう。インフレでは売上はインフレ分嵩上げされますから利益もそれなりに増加します。ですから企業収益も増加し、従業員の給与やボーナスもある程度増加します。一方、デフレでは売上の低下にコストの削減が追いつきませんし、売上を増やすには価格を下げなければなりませんので、企業にとって厳しい経営環境が続くことになります。デフレ期には実質的な貨幣価値が上昇しますので実質的な負債は増加することになります。このように考えるとデフレの方がインフレより悪質であるといえます。
 この悪質なデフレから脱却しつつありますから、これからは好況になれば金利も上昇するというノーマルな状態に戻ることになります。しかし、金利の上昇は円高要因になりますから、金利を引上げる際にはそれがもたらす為替市場への影響なども考えなければなりません。まだまだ、いろいろな問題がでてくるとは思いますが、日本経済が立ち直りつつあるということは評価すべきことだと思います。

2006年03月27日

時価総額・株価について

 企業サイドでは企業価値を上げること、つまり時価総額の増大を図ることが企業のIR活動の目的です。時価総額は株数x株価で算出されますが、株価が問題になります。
 株価は将来の期待値ですから、そのときの経済環境、投資家心理によって大きく変動します。それも短期間に大きく変動します。特に投資家心理が大きく影響します。よい材料がでると、バスに乗り遅れまいとして買いを入れますし、値動きのよさからもっと儲けたいとの心理が働きます。ですから株価の動きだけで投機が起こります。一方、株価が下がり始めると損をなるべく抑えたいということで値段にかまわず売却しますし、買いの手は引っ込んでしまいます。日本人の単一民族という欠点が株価形成にもでるのです。皆同じような行動をしますから、この株がよいとなれば皆がなびき株価の変動が大きくなるのです。日本の株式の特徴ですが、時流に乗った株、マーケットのテーマにあった株は3―5年後の利益まで買ってしまい、後は材料出尽くしで残るのは悪材料のみということになり株価は長期低迷を余儀なくされる場合が多々あります。
このように株価は大きく変動します。株価の常として、行き過ぎがあるのです。適正な価格では止まらないのが株価です。常に上にもしたにもオーバーシュートするのです。
 企業価値の増大とはいうものの短期間に株価が大きく変動するのでは、適正な株価とはどのような状態の株価なのだろうかとの疑問がでてきます。いつの株価をとればよいのかという問題です。景気の変動にあまり影響を受けずに傾向的に時価総額が上昇を続けているとか、恒常的にマーケットのPERを上回って買われているとか、同業他社のPERより高く買われているというような納得しやすい補助的な尺度が時価総額の判定には必要になると思います。

2006年03月28日

中期計画の中身の変遷

 投資家の注目を集めるものの一つに企業の中期計画があります。この中期計画ですが、なるべく具体的な数字を盛り込んだ計画は投資家にとってわかりやすいこともあり評価されます。この中期計画も最近は内容が変わってきました。
 1990年代後半の中期計画ではバブル経済の崩壊から、3つの過剰に悩み続けた日本企業を象徴するように過剰負債の削減、人員削減、資産の集中と選択を掲げる企業がほとんどでした。水ぶくれのふやけた体質から贅肉をそぎ落とした、筋肉質の体質にもっていこうとする中期計画でした。ところが、その合理化も一段落してくると次は企業の成長路線を積極的に探すことになります。ですから自社の強みを生かした企業のキャッシュフローを増加させるプロジェクトを模索し、積極的に取り組もうとする中期計画に変貌しています。現状はデフレ経済から脱却しつつありますから、今後はこのような中期計画の発表が増えるものと思われます。
 ずっと以前の中期計画には、シェア日本一を目指すとか、売上日本一を目指すなどの表現があったような記憶がありますし、そのシェア日本一、売上日本一のためには儲からなくてもよいというような風潮があったように思えました。シェアや売上至上主義が影を潜めて久しいですが、中期計画の中身も時代を投影するものです。今回はポシティブなより積極的な内容が多くなると思います
 これまでの徹底した合理化で利益が出やすい体質になっていますから、次の成長路線が軌道に乗るのは早いかも知れません。

2006年03月31日

投資判断の際のアナリストの3大要素

 アナリストは、企業を分析し業績を予想するのが使命です。このためには当然のことながら経済の知識が必要ですし、担当業種の特徴、その企業の特徴等を知らなければなりませんし、財務分析も行わなければなりません。
 以前にも書きましたが、それだけでは十分な分析ができません。財務諸表に書いていないことが重要なのです。それが経営者の資質ですと書きました。あるサイトをみていたら、企業評価に関する調査結果がでていました。世界的なPRコンサルティング会社が実施した調査の結果です。
 その結果ですが、世界のアナリストは「経営者の質」を最も重視しているということです。「経営者の質」が投資判断の際に最も重視する事柄で、2番目が「公約の実現」、3番目が「業績」となっています。その他の投資判断の要素として「事業戦略」、「成長性」、「企業統治・透明性」があり、この順で重要度が減っています。また、最高経営責任者のリーダーシップの判定材料は「業績拡大に向けた努力」だそうです。私の感覚では、日本のアナリストの場合は1番重要視するのが「業績」で、2番目が「成長性」、3番目が「経営者の質」となると思いますが、投資判断の要素として「業績」、「経営者の質」が入っているのは納得がゆくものです。「業績拡大に向けた努力」をカリスマ的に行う経営者は評価が高くなり、投資判断に大きく影響するということは納得がゆきます。多少の地域差はあると思いますが、洋の東西を問わず、アナリストの感覚は同じようなものであるという感を強くしました。

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